「10坪で整骨院を開業したら狭いかな?」
開業前にこのような悩みを持たれる先生方は多いのではないでしょうか。
わたし自身、整骨院を2度開業していますが、1度目の開業前は同じことで悩みました。
結論から言うと、10坪は少し狭さを感じるものの、整骨院を経営することのできる広さです。
ベッドは3台は置けます。
むしろ、テナント料や内装工事を含めた初期費用まで考えると、むしろ10坪前後の広さで始めるのが無理のない選び方かもしれません。本ページでは、10坪の整骨院のレイアウト、7坪・15坪との比較、開業にかかる初期費用の目安を順に紹介していきます。
10坪ってどのくらいの広さ?
10坪は約33㎡、畳にすると約20畳の広さです。1坪がおよそ畳2枚分なので、坪数を2倍すると畳の枚数になります。
| 坪数 | ㎡ | 畳(目安) |
|---|---|---|
| 7坪 | 約23㎡ | 約14畳 |
| 10坪 | 約33㎡ | 約20畳 |
| 15坪 | 約50㎡ | 約30畳 |
戸建てやマンションの広めのリビングが15〜20畳ほど。10坪は、それをまるごと院にしたくらいの広さだとお考えください。
10坪整骨院のレイアウト

10坪の整骨院は、待合室を最小限にして残りを施術室に回すのが基本のレイアウトです。テナントでもっとも多い長方形の物件を例に、配置してみます。
待合室を配置(3.3㎡以上)

ご存じの先生がほとんどですが、整骨院(柔道整復の施術所)には構造設備の基準があります。
- 6.6㎡以上の専用の施術室があること
- 3.3㎡以上の待合室があること
- 施術室の床面積の7分の1以上に当たる部分を外気に開放できること(適当な換気装置があれば不要)
- 施術に使う器具や手指などの消毒設備があること
待合室に必要な3.3㎡は約1坪、畳2枚分です。上のイラストのオレンジ色くらいのスペースで足ります。
10坪の院で気をつけたいのは、施術室と待合室の区切り方です。自治体によっては固定の壁などで区画するよう求められ、カーテンやパーテーションでは認められないことがあります。物件を決める前に、管轄の保健所へ図面を持って相談しておくと安心です。
施術ベッドを配置
待合室を広く取りすぎなければ、施術室の6.6㎡以上は10坪なら問題なく確保できます。ここに施術ベッドを並べてみます。ベッドのサイズはさまざまですが、今回は190×60cmで考えます。

「え?こんなもの?」と思いませんか。この大きさなら、これくらい並べられそうに見えます。

図の上では好きに並べられますが、実際にはこうはいきません。ベッドとベッドの間に、施術者が動ける通路が必要だからです。

圧迫感がなく、施術者が行き来しやすいベッド間の幅は0.7〜1m。ベッドの幅よりも、通路のほうが広くなります。

さらにトイレ、受付、収納、着替えのスペースを差し引くと、10坪で置ける施術ベッドは3台ほどに落ち着きます。
7坪・10坪・15坪で置けるベッド台数の違い
待合室やトイレを確保したうえで置けるベッドは、7坪で2台、10坪で3台、15坪で4〜5台が目安です。ひとりで施術するなら7〜10坪、スタッフを雇うなら15坪前後がひとつの線引きになります。
| 広さ | ベッド台数の目安 | 向いている運営 |
|---|---|---|
| 7坪(約23㎡) | 2台 | ひとり院・予約制 |
| 10坪(約33㎡) | 3台 | ひとり院〜スタッフ1名 |
| 15坪(約50㎡) | 4〜5台 | スタッフ2名以上・物療中心 |
※190×60cmのベッド、ベッド間の通路0.7〜1m、待合室・トイレ・受付を確保した場合の目安です。物件の形や柱の位置で前後します。
ひとり院なら7〜10坪のベッド2〜3台で十分
ひとりで施術する場合、同時に使うベッドは多くても2台です。1台で手技をしている間に、もう1台で物療機器を当てる。この回し方なら、3台目は予備や荷物置きになることがほとんどです。
予約制で1人ずつみる院なら、7坪のベッド2台でも窮屈さはありません。空いたスペースを待合室や着替えに回したほうが、患者さんの居心地は良くなります。
スタッフを入れて4台以上置くなら15坪前後が必要
スタッフを雇い、物療機器を中心に複数の患者さんを同時にみるなら、ベッドは4台以上ほしくなります。この台数に通路とスタッフの動線まで確保するには、15坪前後の広さが必要です。
ただし広さが増えるほど、家賃と内装費も比例して上がります。最初はひとり院として10坪で始め、患者数が増えてから移転や増床を考える先生も少なくありません。
10坪以下の整骨院実例
10坪前後で開業している整骨院は、実際に少なくありません。内装会社の施工事例を見ると、10坪に施術スペースを4か所つくった院もあります。
東京・千住の1階路面店に開業した整骨院は、空きテナントの10坪を一から内装した事例です。待合と受付は保健所の基準を満たす最小限の広さにとどめ、残りを施術スペース4か所に回しています。施術スペースの間は壁ではなく吊りカーテンで仕切り、狭い中でも圧迫感が出ないようにしています。
整骨院専門の内装会社が「5〜10坪」の施工実績として紹介している院には、次のようなところがあります。
どちらも待合室と施術スペースを分け、個室の施術室も備えています。狭さを間取りの工夫で補えば、10坪以下でも一般的な整骨院の形は十分につくれます。
出典:整骨院 内装工事実績(10坪・空きテナント)/5坪~10坪の内装施工(フルサポキュア)
10坪の整骨院の開業にかかる初期費用
10坪の整骨院を開くときに大きくかかるのは、内装費と物件取得費の2つです。内装費は標準的な仕上げで200〜300万円、物件取得費は店舗用の物件なら家賃の1年分を超えることも珍しくありません。
物件取得費の中でいちばん大きいのが保証金(敷金)です。事業用の物件では家賃の10〜12か月分が相場で、これに礼金(1〜3か月分)、前家賃(2か月分)、仲介手数料(0.5〜1か月分)が加わります。家賃10万円の物件なら、物件取得費だけで150万円前後を見ておく必要があります。
内装費は標準的な仕上げで坪20〜30万円が目安
整骨院の内装費は、標準的な仕上げで坪20〜30万円ほど。10坪なら200〜300万円の計算です。デザインや素材にこだわると坪40〜50万円を超え、10坪でも500万円近くになります。
内装費は坪数にそのまま比例します。1〜2坪狭い物件を選ぶだけで数十万円変わるため、「迷ったら狭いほう」が初期費用を抑える近道です。
出典:整骨院の坪単価及び相場感について(アーキクラウド)/整骨院を開業する場合の内装工事箇所と費用(内装広場)
居抜き物件なら内装費を大きく抑えられる
前の店舗の内装や設備が残ったまま借りられる居抜き物件なら、間仕切りやトイレ、照明を作り直す必要がありません。10坪の院では内装費の大半を壁と水回りが占めるので、ここを流用できるだけで費用は大きく下がります。
整骨院と相性がいいのは、整体院やクリニック、エステサロンの跡です。個室の仕切りや手洗い場がそのまま使えることが多く、先ほどの構造設備の基準も満たしやすくなります。
一方で、前の借主に払う造作譲渡料がかかる物件や、退去時に居抜きの設備まで撤去する原状回復を求められる物件もあります。契約前に、譲渡される設備の範囲と退去時の条件を書面で確認しておいてください。
10坪整骨院を開業するときの注意点
10坪で整骨院を開くときは、物件の形と内装業者の選び方で使い勝手が大きく変わります。
- レイアウトしやすいテナント選び
- 安くて仕事が丁寧な内装工事業者選び
レイアウトしやすいテナント選び
同じ10坪でも、テナントの形はさまざまです。いちばんレイアウトしやすいのは長方形で、正方形や三角形に近い物件、柱が中に出ている物件は、ベッドの置き場所に困ります。
トイレの有無と位置も確認が必要です。トイレがなければ内装工事で新設する費用がかかり、あっても和式だったり、施術室を通らないと行けない位置だったりすると、使いにくい院になります。
もちろん、立地や駐車場の有無など、広さより優先したい条件もあります。どこで折り合いをつけるかは、経営者としての判断です。
安くて仕事が丁寧な内装工事業者選び
わたしは整骨院を2度開業し、2回とも内装工事業者に依頼しました。正直に言うと、1度目の業者は最悪でした。内装工事業者は腕も対応もピンキリで、悪いところは本当にひどいものです。
10坪の院では、限られた広さをどれだけ広く見せるかが仕上がりを左右します。整骨院や治療院の施工実績がある業者なら、構造設備の基準も、ベッドの配置や動線の考え方も説明なしで通じます。
業者を選ぶときは、必ず相見積もりを取ってください。同じ条件で3社に見積もりを取るだけで、坪あたり数万円の差が出ることもあります。
最後に
10坪の整骨院は、ひとりで施術するなら十分な広さです。ベッドは2〜3台で足り、家賃も内装費も抑えられます。
整骨院の数が増え続けるなか、小さく始めて支出を抑えるのは、経営を安定させるための堅実な選び方です。物件を決める前に保健所への相談と内装業者の相見積もりを済ませて、無理のない開業を進めてください。

